時間単位で把握する

追跡と監視の意味

 CMMのいう「追跡と監視」では、具体的にどの作業が遅れ、どの作業が予定より進んでいるのかを把握するだけでなく、その遅れは何時間の作業に相当するのか、というところまで把握できなければ意味がないと指摘しています。

 ここでも、『計測されなければ改善されない』というデマルコの法則は生きています。つまり、“遅れ気味だ”という報告は、改善に対して何の役にも立たないのです。実際、進捗会議(報告会)の場で、「この作業は遅れ気味です」という報告をしたとき、そこから何が導き出されるでしょうか。もちろん、どうしてそうなったのかと詰問されるかも知れませんが、そこには大抵の場合、当事者にとっては「不可抗力」と言えるような事態が発生しており、当事者はそれを思いつくだけ並べるでしょう。

 そして厄介なことに、そのような組織では、その会議を取り仕切っているマネージャーも、少し前には同じ理由を並べていたこともあって、「不可抗力」に理解を示すことすらあるのです。

 本来、そのような事由を並べられても、それぞれの事由について、それがどの作業にどの程度の影響を与えたのかを問い正せばよいのですが、もともと、その場に広げられているような大雑把なスケジュールが“まかり通る”組織ですから、そのような突っ込みが為されることはおそらく100%ないでしょうし、第一、それを裏付けるるものがありません。

 そのような組織では、スケジュールを時間単位で予定していないことが多く見られます。最初にも述べたように、このような中途半端な取り組み方では、早晩、取り組みは中止されるでしょう。(すぐに止めてしまうわけ

進捗を時間単位で把握できるか

 詳細レベルのスケジューリング作業は「時間単位」で把握しなければ効果がありませんし、そのことは既に述べてきましたが、それは「監視と追跡」という視点からも重要になってきます。

 3時間で終わると想定していた作業が、実際に5時間かかってしまい、そのために今日予定していたもう一つの作業に入れなかったという場合、時間単位で計画されたスケジュールであれば、「何が原因で2時間の遅れをもたらしたのか」という視点から原因を検証することが出来ます。そして、その原因が、明日以降の類似の作業にも存在しないかどうかを考えることも出来ます。

 「1日単位のスケジュール」では、そのような誤差はほとんど見過ごされているものです。そのために、今日行われる予定(であった)の作業の中から1つの作業を明日に押しやり、明日にはさらに2つの作業を翌日に押しやります。その結果、わずか1週間(5日)という期間の中でも、簡単に2日程度のズレを産み出してしまいます。

 これが、半年のプロジェクトが2ヵ月以上遅れてしまうことに繋がることは言うまでもありません。そして、多くの開発組織において、実際にこのようなことが繰り返されているのです。

 一つの作業が1日を越えないような時間単位に計画されたスケジュールのもう一つの利点は、殆どの場合、1日を終えた時点で、その作業が終わったか、途中なのか、それとも着手していないかの何れかであることです。精々着手の時間によっては、明日の午前中には終わるでしょう。したがって“遅れ気味です”というような曖昧な報告をしないで済みます。

実際にかかった時間を書き込む

 当然、このように時間単位で作られたスケジュールですから、一つの作業を終える毎に、スケジュール表を取り出して「完了」のマークと、実際にその作業に費やした時間を書き込んでいくことになります。場合によっては、1日に数回「完了」マークと実時間を書くこともあるでしょう。

 しかしながら、作業は終わればそれで「お仕舞い」という訳にはいきません。3時間と予定した作業が2時間で終わったのか、逆に5時間かかったのか、実際に費やした時間を書き込むことで、自分の見積り能力に対してフィードバックが出来るのです。

 見積り能力とは、言い換えれば「想像力」でもあります。3ヵ月前に、「今日の作業」をどれだけ正確に想像できたかです。或いは1週間前に見直した見積りが、どれだけ上手く見積れたかなのです。

 この種のスキルは、単に長くその作業をやってきたというだけでは十分ではありません。意図してトレーニングしなければ身に付くものではないのです。

 つまり、1時間の作業が2時間で終わったとしたら、この1時間は単に大雑把だったのか、「安全」をみた結果なのか、それとも何かを流用できたことによって短くなったのかを見極めなければなりません。勿論、この場合も、着手する前に「流用」の方針をイメージ出来ていなければなりません。

 ここで注意しておいて欲しいことは「安全」をみるやり方は、確かに「遅れ」は生じないかもしれませんが、「見積る力」が身に付かず、決して正しい見積り方ではありません。

 先に「計測されなければ改善されない」というデマルコの言葉を紹介しましたが、見積もる能力も計測されなければ改善されないのは同じです。では、見積もる能力をどうやって“測る”のかというと、作業を時間単位で見積もり、その結果を記録することで、目標値との乖離が数値になって手に入ります。この乖離値を使って「見積りプロセス」にフィードバックするのです。

 このときもまた、「出来ない理由の闘い」になるかも知れませんが、それに負ければそこまでです。(出来ない理由のオンパレード


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