GE会長のジャック・ウェルチのインタビュー記事について


10月中ごろ、GEのジャック・ウェルチ会長が2年振りに日本にやってきた。その時のインタビュー記事が日経ビジネスに掲載されているので、その中から、重要なポイントを幾つか紹介します。

ウェルチ氏が会長に就任したのは今から15年前の1981年で、46歳という若さで40万人の社員を擁する企業のトップに就いたわけです。以来、ワークアウトという取り組みの中で、高性能パソコンとネットワークの時代をいち早く予想し、「バウンダリレス」「(決定の)スピード」「ストレッチ」というスローガンを掲げ、新しい時代に向かって大胆な舵取りをしてきました。


エジソンの時代から手掛けてきた家電製品の殆どを“GEの手掛けるビジネスではない”と事業もろとも手放し、社員を半減させながらも利益は殆ど前年を上回るという結果を残してきたのです。
GEが100年ものあいだ一流企業であり続けたのは、常に新しい時代を予見し、それに相応しいように組織を適応させてきたことにあるといっても過言ではないでしょう。GEの一挙手一投足は、世界の企業に多大な影響を与えてきました。

さて、GEはシックス・シグマ(6Σ)という欠陥率を劇的に減らす取り組みに着手していますが、それについてのインタビューのなかで、興味深い個所がありますので紹介します。
6Σの狙いについての質問に対して、ウェルチ氏は、

「われわれは過去15年間、ハウツー・ビヘイブ(どう振る舞うか)の文化作りに邁進してきた。・・・組織と組織の壁を取り払って仲間と一緒に仕事をするバウンダリレス、ピラミッド型・官僚組織型ヒエラルキー構造を崩し、意思決定のスピードを上げた。アイデアを積極的に会社の内外に求め、アイデアを独占する人より広げた人の方を評価する文化も作り上げた。これからは・・・どう仕事をするのか(ハウツー・ワーク)に挑戦する」

と答えている。
インタビューアがさらに、6Σの目的は経費を削減し、経営コストを下げることにあるのではないのか、と追い打ちを掛けたが、これに対する答えが、

「数字は結果に過ぎない。われわれはドルを目標にしたことは一度もない。利益はこのプロジェクトが成功すればついてくる。大事なことは社員の気持ちに“品質”を植え付けることだ」と応じている。


見事としか言い様がないですね。伊達にGEの会長を務めているわけではないようです。数字を目標にしない、と言う姿勢は素晴らしいと思います。もちろん、GEの会長として数字(100億ドルの削減効果)は頭にあるはずですが、それを目標にするのではなく、それを結果として産み出す取り組みに繋がる「姿勢」とそれが“習慣”になることを目標にしているのです。数字を目標にすれば何が起きるか心得ているのです。

100億ドルもの効果となると、普通の経営者なら間違いなく「大看板」に掲げて目標にするでしょう。その場合、社員の“ガンバリ”によって確かに目標の数字は達成するかも知れませんが、その数字を結果として産み出す「文化」を浸透させなければ、一時的な成果に終わってしまうことは火を見るまでもなく明らかなのです。

ウェルチ氏はそこをきちんと心得ているようです。15年間でハウツー・ビヘイブの文化作りに成功し、更にこの後、社員に“品質”の意識を植え付け、ハウツー・ワークの文化を浸透させれば、100億ドルは目をつぶっていても達成できるというのです。

実に恐ろしい会社です。目標に向かって明快なシナリオを描き、それを徹底するのですから。ウェルチ氏は「いままでバウンダリレスという言葉を8兆回繰り返した。シックス・シグマも8兆回繰り返すだろう」と言う。これが経営者のリーダーシップかと改めて感じさせられます。

どうか、このページを読まれた方は、単に海の向こうの大会社の経営者の言葉として捉えるのではなく、これを参考に、自分たちの目標を設定し、それに向かって徹底した取り組みに挑戦して下さい。GEは本気ですし、間違いなく世界の流れを作りだす企業です。

GEがシックス・シグマというとんでもない取り組みに本気であるということは、間違いなく、21世紀はこの“品質の概念”が主流(或いは常識)になるということです。

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