なんて思っていませんか?
もし、そのように思っているのでしたら、あなたは間違っています。
仕事は「契約」です。いつまでに何を実現するかという約束です。そしてスケジュールはその約束の「裏付け」です。そうでなければビジネスは成り立たないし、世の中そのものが成り立ちません。
“ご希望通りに3月末までに仕上がるかどうか約束できませんが、取り敢えずやって見ます”では仕事になりません。部品の発注でも、何時入荷するか分からないような業者に発注することはないでしょう。
それなのにソフトウェアの世界では、何故か“約束不履行”が横行しているのです。もちろん表面的には“約束できません”とは一言も言っていませんが、その約束の裏付けとなるスケジュールを見ることはほとんどありません。確かにスケジュール“らしい”ものは提出されますが、その内容は稚拙で、最初から約束を裏付けるという意図を感じさせるものではありません。それでもビジネスは成立?しているのですから、この世界は不思議な世界です。でも、いつまでもそのような甘い考えが通用するとは思えません。
そのような甘いビジネスが成立している理由は唯一つ、他に選択の余地が無いからです。つまりどこの業者に頼んでも同じだと思うから、最初から諦めているのです。依頼される側も、依頼者が最初からそのような期待をしていない、少なくとも表面的にはその様に言っても、最初から“無理かな〜”と思っているということを嗅ぎとっているのです。
望ましい姿を追わないところに、望ましい状況は生まれません。スケジュールが実際の作業に役に立たないのは、作業の「量」が見積もれていないからであり、それは作業の単位が抽象的だからです。作業の「量」が見積もれなくては時間を見積もることは出来ません。また個々の作業の「リスク」も予測することは出来ません。結局、単なる「努力目標」の域を出ることが出来ず、“予想しなかった作業”によって2週間ともたずに崩れ去るのです。(“プロセス・レベルの改善に取り組む”の「プロジェクトの計画」「プロジェクトの追跡と監視」を参照してください)
ソフトウェア開発の関係者は、
『プロジェクトが予定より1年遅れるのは、なぜなのか。…………
1日の遅れが積み重なるからだ』
というフレッド・ブルックスの言葉を吟味すべきです。このブルックスの言葉が、スケジュール管理の全てを物語っているといっても過言ではありません。
スケジュール管理は、1日の遅れがその日の内に発見できることに尽きます。したがって、そこに用意されたスケジュール表は、それに耐えられるようなものでなければなりません。
“スケジュールなんて合いっこない!”なんて思っている限り、約束できるスケジュールを考えることは出来ないでしょうし、それ以上に、約束できるように進捗をコントロールすることは出来ないでしょう。
どうすればブルックスの言うことを実現できるのか、どうすれば1日も遅らせることなくプロジェクトを進めることが出来るのか、を真剣に求めることです。そして、1日の遅れをその日に発見することであり、それに耐えられるようにスケジュールを考えることです。(詳しくは、「詳細スケジュールの作成と管理の方法」を参照してください)
ただ、この問題は各人の「内面のプロセス」にも深く関わる問題であるだけに、適切な指導と訓練が必要になるでしょう。
最近になって「プロセス成熟度」の提唱者であるW.ハンフリー氏は「PSP(Personal Software
Process)」という考えに基づくトレーニングによって、個人単位で「約束」できるレベルに引き上げることに取り組んでいます。氏も、この「内面のプロセス」の問題に気付いているのです。