外部の世界と積極的に接触する

もう一つ、ソフトウェア・エンジニアの大きな問題は、外部世界との接触が足りないことです。

殆どのソフトウェア・エンジニアは、朝、出勤すると机の前のパソコンの電源を入れて、夕方(夜?)仕事を終えて電源を切るまで、チームのメンバー以外の人と接触していないのです。せいぜい、昼休みやコーヒー・ブレークの時に、自動販売機の前や、喫煙所で、職場の仲間と話をする程度でしょう。そこで、自分にとって新しい、有益な情報を手に入れることは、ごく稀なことではなでしょうか。

ハードウェアの人たちは、これに比べて、部品の納入業者や、ボードの発注の為の、外部の業者の人と接する機会が多く、そこで外の世界の動きなどを入手することもあるのですが、ソフトウェアの人たちは、たとえ外注業者を使っていても、外注業者のレベルの問題もあって、彼らから新しい、有益な情報の入手は臨めないのが実情でしょう。

でも、これでは「井の中の蛙」になってしまいます。世界は激しく動いているのに、自分たちの世界は止まったままの状態になってしまいます。市場の要請を読み取ることが出来なければ、早晩、開発部隊は行き詰まります。この場合、問題は、開発環境やシステムのアーキテクチャにあるため、CMMの提案するプロセスの改善では対応できなくなります。

その証拠に、組み込みシステムの開発現場で、いまだにアセンブラで開発していたり、適切なリアルタイム・モニターを導入していない組織が存在しています。DSPとか、特殊な世界は、まだそれが「主流」ですので、今のところ問題ないのですが、これとて、何時までも、そのままでは済まされません。

DSPの世界も、新しい開発環境が用意され、開発のスピードアップが求められるでしょう。そのような「動向」を素早くキャッチして、開発体制や、環境を適切に変化させなければなりません。そのキャッチを怠れば、体制の切り替えのタイミングを逸し、泥沼の状態になります。

最近は、インターネットの環境が普及したことで、ソフトウェアのエンジニアも、外部の世界の動きを知る方法が手に入りました。しかしながら、これとて、待っていては手に入りません。自分から情報を取りに行かなければ、以前と同じです。

ただ、そのような環境が整備・普及してきたにも関わらず、実際の仕事が捗っていなければ、自らの意思で外部世界に接触出来ないかも知れません。その結果、「求められるエンジニアの姿」から離れて行くことになるでしょう。

このほかに、個人的に社外の人と接触したり、外部のセミナーやコンベンションなどに出席したりして、外部世界と接触することも重要です。企業や職場は、積極的にこれを進めるぐらいでなければ、優れた人材を育てることも、されにはそのような人を引き留めておくことも出来ないでしょう。

いずれにしろ、「井の中の蛙」はエンジニアにとって致命的です。




「Index of SE の為の講座」