チーム内の技術移転を進める



通常、ソフトウェア開発チームにおいて、その組織のなかで経験や技術的に強い人がリーダーを勤めているものと思われます。ソフトウェア開発のチームは技術集団である以上、ある程度は技術的問題を解決する能力の高い人が望まれるため、このような状態になるのは自然なことかもしれません。

それでも、実際には技術だけでなく、ある程度「総合力」も勝っているものと思われます。逆いえば、組織はそのような人をリーダーに据えたはずです。
しかしながら、そのためにチーム内の技術的片寄りが大きくなる危険があります。

さて、リーダーは仕事の完成を請け負っています。チームのメンバーに仕事を分担する際には、メンバーの知識や経験などを考慮して振り分けることになりますが、既に述べたようにそのチームで最も経験が豊富なのは、実はリーダー自身なのです。そのため、技術的に難しい部分や、メンバーの手に余った部分をリーダーが担当しがちになります。このような状態が、リーダーへの技術的片寄りを一層助長することにもなります。

もちろん、リーダーも自分の持っている技術をメンバーの誰かに移転しなければならないことは認識していると思いますが、リーダーは仕事の完成そのものを請け負っているため、プロジェクトの中で技術移転を行うことによってその約束が果たせなくなる危険があるときは、自らの考えで技術移転を進めることが出来なくなります。こうして、技術移転のタイミングを掴めないまま、プロジェクトを重ねてしまっているのが現実でしょう。

このことは2つの問題を引き起こします。
一つは、一人のリーダーに技術が集中することによって、人事異動など組織変更が行われると、重要な技術ごと移動してしまうために、残されたチームや組織は大きなダメージを受ける危険が高いことです。

もう一つは、そのような事態に陥ることが明らかなため、元リーダーは移動後も相変わらず以前の仕事を続けることになり、本来の新しい役割をこなせなくなります。組織も「現実の問題」を優先せざるを得ず、そのような状態を追認せざるを得ません。そしてこのような一時的な措置も、実際に技術移転が行われない限り、このような変則状態は解消されず、何時までも引きずる危険があります。

この様な事態を避けるためにも、早めにリーダーの技術をメンバーの誰かに移転しなければなりませんが、この判断と責任をマネージャーが引き受けない限り、現実問題として移転は捗らないでしょう。

リーダーは仕事の完成そのものを請け負っており、技術移転によって納期が遅れたり、品質や実現機能に支障が出たとき、その責任はリーダーのところに回ってきかねません。したがって、マネージャーの判断と責任で、リーダーに対して技術移転を進める様に指示を出すことが必要になります。そして、技術移転のための具体的プランをリーダーに求めるべきです。

勿論、移転にはリスクが伴う以上、それに対してどのように対処するかが問われるとともに、ある程度のリスクを見込む必要があることは言うまでもありません。そしてこの種のリスクはマネージャーが参画しない限り、正しく取り扱われることは難しいでしょう。

何れにしても、リーダーの持つ技術を移転する判断はマネージャーの仕事であり、これをリーダー自身に委ねることは適切な措置ではありません。この意味でもマネージャーの役割は大きいのです。




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