これからのソフトウェア・マネージャー 


プロジェクトがスケジュール通りに運んだことが無い?
チームの生産性を上げるための取り組みが分からない?
自らの組織の方向をどう定めればいいのか?


 ソフトウェア開発組織のマネージャーは、幾つかの点で、他の分野のマネージャーに比べて大変かもしれません。

 実際、
 ・技術革新が早く、それに対応する形で市場の要請が出されるし、
 ・開発方法も色々と提案されるが、それを取り入れるには障害が大きい
ことは確かです。

 でもそうやって取り組みに躊躇している一方で、ずるずると現実の業務に押され、益々取り組みの契機を見失っていきます。現実に目の前の業務をこなしながら、新しい体質を身に付けていくことは易しくありません。

 いっそのこと、“最初から組織を作ればもっと上手く行くのに”という誘惑に駆られるものです。でもそれは殆どの場合「蜃気楼」の様なものです。新しい組織を作っても、二年もすれば今と同じような組織になることでしょう。

  どうしてこのような混乱した組織になるのか
  どうすればそれを回避できるのか

という事について、何らかの答えを持っていない限り、“新たな組織を・・・”という思いは幻想でしかないのです。もちろん、関係者は“もっと理想的な組織”を願ってきたと思いますが、何かが不足していたために、残念ながら期待するような結果にならなかったのです。それが「何」であるのかを見付け出さない限り、新しい組織でスタートしても、1、2年の内に同じような結果になるはずです。

 間もなく、世界は激しい生産性の競争に突入するでしょう。既にアメリカ産業の生産性は、労働組合の強い自動車産業を除いて、今のドル高をクリアしているのです。それ程高い生産性を確保しているのです。自動車産業も、早晩ドル高をクリアしてくるでしょう。

 そして、このようなアメリカ産業の動きに対抗すべく、ヨーロッパの産業も、生産性を確保するために動きだしているのです。ドルに対してマルク安、フラん安の間に、輸出産業を中心に収益を上げながら、人員整理を行っているのです。その結果、ドイツでは史上最悪の失業者を出しています。個々の企業としては、そこまでやってでも、飛躍的な生産性の向上を達成しなければ、アメリカの企業に勝てないのです。

 もちろん、日本もその生産性の競争の外に居るわけでは在りません。日本の企業の生み出す製品は世界で競合しているのです。製品の競争力は技術的な差生産性の差の影響を強く受けます。生産性の悪さは、製品のタイムリー性にも影響します。生産性が悪ければ、いずれ競争の場から降りなければなりません。

 組み込みシステムの場合、ソフトウェア開発組織の生産性は、必ずしも、「部品」の価格には影響しないかも知れませんが、市場への投入時期を誤らせたり、製品の品質に影響をします。今日のように、競争が激しくなった時代では、市場の投入の遅れが、その企業にとって致命傷となることもしばしばです。

 その他にも、生産性が低いことによって、開発要員を多く抱えることになり、企業のコスト体質を悪化させ、結局は製品の競争力を失わせることになり、同時に適正な収益を上げることが困難になります。

 これからは、ソフトウェア開発も、ただ、開発できるかどうかだけではなく、どれだけ効率的に開発できるかが問われます。生産性の低い開発組織は、残れないでしょう。いや、残すべきではないと言ったほうが適切かも知れません。適切に資本の論理が働けば、そのような組織は残れないのです。それでも残そうとすれば、新規参入を阻むような何らかの「規制」が必要になります。だが、この種の規制は、結局は日本を蝕むだけなのです。

 ソフトウェアの部門に限らず、これからのマネージャーは、生産性の高い、活力在る組織を作れなければ、その役を全うすることは出来なくなります。さらに、豊富な知識と、それに基づいた見識を持ちあわせないと、適確な判断が出来ないでしょう。

 その組織にしか通用しないマネージャーでは、21世紀は覚束ないでしょう。何処でも通用するマネージャーを目指して、励んで欲しいと思います。そのようなマネージャーが、一人でも多く輩出されないと、日本の企業は21世紀の波に飲まれてしまいます。

 昨年から、大手のソフトウェア会社が「プロジェクトが見通せる人」を募集していましたが、残念ながら、その募集枠に対して、採用できたのは2割〜3割に止まっています。それだけ有能なマネージャーが居ないと言うことです。この種の人材を確保できないかぎり、21世紀に存続できないことを、これらの企業は気付いているのです。

 このホームページをご覧のマネージャーの皆さん。或いはマネージャー予備軍の皆さん。21世紀に「マネージャーとして求められるスキル」をしっかり見据えて、それを「文字」にして見て下さい。そして毎日の業務の中でそれを手に入れていく工夫を「文字」にしてみて下さい。

 そうして文字にされた工夫を、あなたの組織で実践してみて下さい。もし、あなたの開発組織の生産性が決して高くないのでしたら、それこそ「好機」と捉えて挑戦して下さい。決して「隣りの芝生」を見ることなく、あなたの庭に見事な花を咲かせて下さい。

 それが、あなたが、21世紀にマネージャーとして活躍の場を得る唯一の方法なのです。そして「ソフトウェア・プロセスの改善」に取り組むことで、あなたの庭に見事な花を咲かせるはずです。




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