アウトソーシング

 最近、企業の管理システムをアウトソースする動きが目立ってきています。パッケージ・ソフトの普及で、エンドユーザー・コンピューティングが広がり、それぞれの企業にあった「システム部」の存在が浮き上がったことも一つの原因と思われます。部門の年齢層が高くなったことも、C/Sシステムや、エージェント・システムなど、今後予想される技術の変化に対して、技術面でもコスト面でも対応出来そうもないことも、決断の理由となっているものと思われます。

 勿論、当面のコストダウンを図ることが、アウトソースに向かわせた大きな原因ということもあるでしょう。その場合は、どちらかというと後ろ向きの対応に成ってしまう危険もあります。

  外注との違い

 ソフトウェア開発のライフサイクル全般の中で、部分的に「外注」を使って開発したり、評価業務を委託したりしています。それらの殆どは、コストの削減が中心目的と思われます。あるいは一歩進んで、将来の業務の増減に対応しやすい体制を作るということもあるでしょう。この場合は、状況によってはそれなりのコストが掛かりますが、直接雇用する危険を避けると言う意味で外注を使うわけです。

 しかしながら「アウトソーシング」は、このような「外注」政策とは異なります。その最大の違いは、委託する範囲です。「外注」というとき、「CMM」にもあるように、日常の管理業務は外注先で行うとしても、その主たる管理は発注側で行います。定期レビューを実施したり、マイルストーンの管理をしたりして、外注業者の作業が目的を外さないように管理するわけです。

 これに対して「アウトソーシング」は、ある境界線から向こう側の作業(業務)を一括して委託し、一切管理を行いません。そこにあるのは、結果の管理だけです、もちろん「結果」を求めるわけですから、最初に「目標」「目的」は明確に示されていなければなりません。場合によっては、それは「要求」の形で提示することが可能かもしれません。したがって、「アウトソーシング」には、高度な目的遂行能力や管理能力が求められます。それだけに「外注」の延長では実現しえないものです。逆にいえば、「アウトソーシング」を検討する際には、その辺りの能力を見極める必要があるわけです。

  何を「アウトソース」するか

 21世紀は「効率」の時代に入ります。その意味では、スリム化した企業しか生き残れない。社内で、効率の悪い部門は整理するか改革する必要があります。その過程で1/3の社員がリストラの対象になるだろう。このような状況のなかで、企業が生き残るためには、「コア・コンピタンス」を強化することです。これまでの日本的経営の発想では、他社と比べて弱い個所があれば強化するという方向で動いてきました。これは、「企業版」の国民経済の発想で、これからは、個々の企業にあっても「グローバル経済」の発想が求められます。

 つまり、何でも、自前で用意するのではなく、自社にとって「コア・ビジネス」ではないものは、『強者の提携』の道を選ぶことも必要になってきます。苦手な部門を改革するにしても、

 競争上の制限時間内に改革できそうもない場合や

 当面のレベルには到達できても、この後の技術の進歩等を考慮すると負担になる場合

 などは、アウトソースの道を選ぶことも必要になってきます。その判断は、経営の基本方針と投資効率によって決まります。これからは企業の存在を左右する個所に資源を集中的に投下することです。1番か2番に成れる部門に集中投下することです。

 例えば、我が社の「コア」は開発部門であるという場合、資材の調達や試作、評価、生産、物流など、開発を取り巻く部分をアウトソースすることが可能です。実際、部品の調達能力が不足しているにもかかわらず、在庫を抱え人を張り付けていても、結局は試作や生産には役に立たないとすれば、その部分から企業の経営はほころんできます。

 そのような状況にもかかわらず、試作も部品の調達もアウトソースできないとすれば、その理由は何かということです。その理由は、正しい理由なのかどうかが問題なのです。たとえば、部品を持っていないと、修正出来なくなる恐れがあるというかもしれません。でもそれでは、最初から部品の在庫があることを想定した作業に成ってしまい、それこそ部品の在庫を持っていて良かったということになります。また、アウトソースすることでコストがアップするという理由もあるかもしれませんが、だとすると、現在抱えている要員のコストはそれほど安いということになり、逆にいったい何ができる人かという問題にも成りかねません。

  「アウトソース」の効果

 「アウトソース」を成功させようとすれば、委託する業務の境界、すなわちインターフェース部分が重要に成ってきます。必要な資料を必要な精度で揃えることができるかどうかです。はっきりしていることは、今まで自社でやってきた作業の流れを、そのまま分割したのでは確実に失敗するということです。また、作業の流れそのものも問題になってきます。

 例えば、多くの開発組織では、評価部門の作業の開始時期は、開発が終了した時点か、その付近になっていますが、これでは遅すぎることは云うまでもありません。「CMM」でも、品質評価チームは、開発チームが動きだすと同時に動くことを求めています。逆にいえば、それだけの資料(前工程の成果物)が整っていることを求めているわけです。このような作業の流れを持っていれば、品質評価の中の「製品品質の評価」の作業を「アウトソース」することが可能になります。もっとも、「製造品質の評価」の作業は「アウトソース」できません。

 したがって、「アウトソース」することで、受け渡しする成果物の精度が向上するのと、作業の流れが明確になり、手純化することが可能になります。というよりも、そうなるように優れた要員をその部分に投入することです。そうしなければ、「アウトソース」は成功しないでしょう。

  コスト意識の高揚

 また、「アウトソース」することで、それぞれの作業工程のコストが見えてきます。開発にかかるコスト、評価にかかるコスト、製造にかかるコストなどが、見えてきます。もちろん、アウトソースする際の費用の算定方法にもよりますが、製造であれば、部品の点数や製造しにくさなども影響してきます。実際、歩留まりの悪さとして出てくるはずですから、その分、高くなります。

 ソフトウェアの開発も、ファンクション・ポイント数や要求の件数、あるいは難易度などを組み合わせて、コストの算定ができるでしょう。そうなると、要求を平易化する技術がコストの差となってくるわけです。また、設計途中での要求の変更にかかるコストや、インプリメント段階に入っての変更のコストは、当然高く付くような算定法方が用いられるでしょうから、それだけ、途中での要求の変更が少なくなるような、要求の確定技術が求められます。

 製品評価であれば、評価項目数はファンクションの件数や難易度によって影響を受けるでしょうし、製造における歩留まりに相当するものとして、発生するバグの件数の想定もコストに影響するでしょう。評価のアウトソースでは、バグを出すことが主たる目的ですが、それでも際限なくバグが出たのでは評価になりません。とうぜん、最初にバグの件数を想定してコストの見積もりが行なわれることになりますので、出来の悪い製品を評価に回せば、それだけ評価作業が滞ってしまうし、何度もやり直さなければ成りません。「アウトソース」していれば、それがそのままコストアップに繋がるわけです。この点は、自社で作業を分担しているときは、今の会計則では見えてこないでしょう。

 つまり、「アウトソース」のやり方によっては、自分たちの作業の生産性や効率が、数字になって見えてくるのです。いまでは珍しくもなくなったが、社屋の清掃も、昔は社員が朝の出社時などの“時間の合間”でやっていました。そのような状況では、この「清掃」作業のコストは見えてきません。でも、「アウトソース」することで、そのコストは数字になって見えてきます。それだけでなく「清掃」作業に生産性の追及が入ってくるわけです。「アウトソース」しない限り、「清掃」作業に生産は持ち込むことは出来なかったでしょう。

  「アウトソーシング」を育てる

 これからの「大競争」の時代を迎えるにあたって、これだけは“絶対に他社に負けない”というものを持っていなければなりません。もちろん、それが多いほどいいのですが、現実問題として、それほど多くの「競争優位」を持っていることは稀です。過去の名声は脇に置いて、冷静になって自分の会社の「競争優位」を探してみて下さい。もちろん、今現在の「優位」だけでなく、明日の「優位」も考えておかなければなりませんが、それでも、ある程度は「優位」の根拠がなければなりません。

 事業をスリム化しなければ、明日の時代は乗りきれないでしょう。既存産業に従事している6500万人が、そのまま明日に引き継がれては、必要な経済成長率を確保できません。既存産業は4500万人で対応し、残りの2000万人は、新しい産業を興していかなければ、国内の資本は海外に流出します。

 6500万人が、それぞれの立場にあって、生産性を50%UPすることです。そうすることで4500万人で対応できることになります。その過程で、「アウトソーシング」という形態も生まれてきます。オフィス運営を丸ごと「アウトソース」することもかのうです。ベンチャー企業にとって技術だけあれば、あとは全て任せることも出来るのです。

 もちろん、「アウトソース」はそのまま競争の対象です。もちろん競争の主な要素はコストですが、コストは生産性に基づいており、ある程度のところで拮抗するでしょう。そうなると、カバー範囲や性能、信頼性、情報力なども、判定の対象になってきます。要するに、いままで考えもしなかったようなことまで考える必要が出てくるのです。逆にいうと、如何に今まで何も考えてこなかったかということです。

 事業をスリム化すること。そして事業を透明にすること。この2つが21世紀初頭のテーマです。いや、そのまえに今すぐにでも、このテーマに取り組まなければならないでしょう。透明性の方は、ここでの議論の対象ではありませんので、別の機会に譲るとして、スリム化については、時間の猶予はありません。そのために「アウトソース」などを上手く活用する必要があるでしょうし、場合によっては、「アウトソーシング」を育てる必要もあるでしょう。

 下請けとしてではなく、対等なパートナーとして「アウトソーシング」を育てることで、多くの企業はその恩恵を受け、自らの事業をスリム化していくことが出来ます。同時に「アウトソーシング」が新しい事業分野として育っていくこともできるでしょう。





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