庵主の日記

(2000/7/20〜2000/7/28)

 7/20 IT革命の意味?
 7/24 H2Aの前途に暗雲
 7/25 O157の後始末
 7/26 契約不在の国
 7/28 G7評価


 7/20 IT革命の意味?

 政府は、景気回復の切り札のように「IT革命」という言葉を使っているが、この「革命」の意味するところを、どこまで認識しているのだろうか? 「IT革命」は、単に予算を投入して景気を浮揚させるような、これまでの公共事業の一種と考えているようでは、とんでもない間違いである。
 我が国は、これまで「失業」に繋がることは全て避けてきた。いや禁じてきたと言ってもよい。日産自動車の座間工場の閉鎖も押しつぶしたし、旧長銀や旧日債銀を一時国有化する際に、不良債権の切り離しをせずに丸ごと国有化したのも、それによる失業の顕在化を避ける為であった。今になって、「瑕疵担保条項」を問題にするほうがおかしいのである。
 「IT革命」は、(教育体制の見直しから)よほど段取り良く計画するか、関連する規制をまとめて取っ払って民間との協調を組まないと、大量の失業者を生み出すことになる。今でも、雇用のミスマッチを解消できない状態であり、これではとても覚束ないし、彼らの救済策(多様な産業の興隆など)を、併せて考えておかないと、世界からおいてきぼりになってしまう。

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 7/24 H2Aの前途に暗雲

 宇宙開発事業団が、H2の失敗を取り返すべく、次期主力ロケットのH2Aの来年2月の打ち上げが微妙になっているという。今年に入って2回の燃焼試験が、相次いで失敗しているためであるが、報道されているところを見る限り、“欠陥個所”の小手先の修正が目に付く。軽量化などの要求を優先しているものと思われ、全体に冗長度を小さく設計されていることが予想される。そのため、一部の手直しが、周辺とのバランスを崩しているものと思われる。
 この種の状況は、組み込みシステムやソフトウェアの開発でも起きるが、「冗長設計」や「変更制御」の仕組みでカバ−することになる。H2Aに、果たして「変更制御」のプロセスが働いていないのだろうか。

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 7/25 O157の後始末

 埼玉県の保健所が、地場産のハム類にO157を誤って検出した問題で、保健所の関係者が処分された。現場の検査官は6ヶ月の減給処分というが、まったく稚拙な処分である。これでは、何も(仕事を)しないほうが安全ということになってしまうではないか。
 間違いは、個人の問題ではなく、システムの問題である。町長が、「これからは、こんなことが無いように気を引き締めて頑張ってもらいたい」というが、気を引き締めて解決する問題ではない。人間は、間違いを犯すものである。それ自体を防ぐことはできない。だからその間違いを起きにくい仕組みや、起きたときでも、システムによって、それを訂正する仕組みを考える必要がある。この問題を個人の責任にすることは間違いだし、それでは、賠償問題が「個人」に向けられてしまう。

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 7/26 契約不在の国

 旧日債銀の譲渡の際につけられた「瑕疵担保特約」に対して、与野党から見直しを求める声が上がっているが、世界に恥をさらす様なものであることを認識しているのだろうか。こんなことがまかり通りようだと、外国からみれば、日本という国には「契約」というものが存在しないということになる
 もともと日債銀を国有化した際に、不良債権を抱えたまま国有化した時点で、今日の国民負担の図式が入り込んだわけで、リップルウッドへの譲渡の際につけられた「瑕疵担保特約」が問題なのではない。少なくとも、そのような特約が付いていなければ、誰も丸ごと買う企業など出てこなかっただろう。それでも「3年間」という年限が切られているので、新生銀行側にも、リスクが存在しているわけである。
 もし、そごうが3年間頑張ったのちに行き詰まったとしたら、誰も問題にしなかっただろうし、場合によっては、新生銀行のトップに対して、“どこに目がついていたのか”と言うのではないだろうか。

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 7/28 G7評価

 先の沖縄で開催されたG7(G8)の査定が公表され、評価についていろいろと言われている。中でも、多額の予算が使われたことに対して、ヨーロッパのマスコミが火をつけた形になっている。折しも、NGOを中心として最貧国への債務棒引きの活動が行われていたこともあって、この金まみれの国際会議に対する批判が表面化した。
 もともと我が国では、沖縄に対する「公共事業」を兼ねたものという位置づけが合ったはずなので、政府はこの批判を無視する姿勢のようだが、一度、傷ついた信用は簡単には解消しない。
 我が国の労働人口の10%が、土木・建築に携わっているといういびつな状態が、あらゆるところで政策をゆがめてしまう。金まみれの国際会議も、国中で常態化した談合も、必要以上の道路工事も、「労働人口の10%」に根差していると言っても過言ではない。

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