庵主の日記2

2003年3月12日 ルール違反のみずほの資金集め

 「みずほ」が、国有化を逃れるために1兆円を越える資本を強化した。その方法は、多くの融資先に出資を求めたもので、明らかにルール違反だ。これでは出資を要請された企業は断れない。「優越的地位の乱用」である。「みずほ」の関係者が乱用を否定するだろうが、それには何の説得力もないし、出資した方も「断りきれなかった」とは言えない。そんなことを言ったら、融資の引上げなどの仕打ちにあるだろうから。

 この資本の集め方が如何にとんでもないことかを説明しよう。例えば、最初に1億円の元金を銀行側が用意し、先ずそれをA社に融資する。その後でA社に出資を要請し、この1億円を出資金として回収する。この方法で1万社に対して融資と出資を繰り返せば、合計で1兆円の資本が集まったことになる。その裏では同額の融資(貸付)が発生しているが、バランスシート上の資本金は1兆円増える。この場合、最初に1億円の元金を銀行が用意したのであって、新たな資金は1銭も増えていない。これは極端な例だが「みずほ」がやったことは、この方法である。全額とは言わないが多くはこれに近いはずだ。

 この結果何が起きるか。出資した企業によっては、債務を増やしたかも知れず、ますます企業の財務体質を悪化させることになる。あるいは、大事な資金をみずほの「資本金」として徴収されたのかもしれない。何れにしても、出資に応じた「みずほ」の融資先は、その分だけ不良債権化する危険がある。つまり、「みずほ」は、自身の不良債権処理を進めるために自らの財務体質を強化するといいながら、逆に「みずほ」自身が持つ債権を不良化しているのである。見方を変えれば、「みずほ」は、自分が潰されないために、今回の出資企業を担保に取ったことになる。いや、もしかしたら、国民を担保に取ったつもりかも知れない。

 同じように資本の増強を図った三井住友銀行は、外部から資金を集めた。そのために高い配当を約束せざるを得なかったが、それは止むを得ない。少なくとも、そうして海外から集めた資金は腐ってはいない。巨大銀行である「みずほ」が、こうしたいびつな形で資金を集めたことによって、日本の経済構造を悪化させることになるだろう。自分が助かるためであるなら、何をやっても通ると思っているのだろうか。

 「みずほ」の関係者は、この方法が適切ではないと知らずにやったとしたら無知も甚だしいし、知っていてやったとしたら、国民を欺くとんでもない行為である。その後始末は、結局国民の負担に回ってくるのである。それはいつのことか。

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