庵主の日記2

2003年01月13日 仕様を詰めないままでの契約

 日本では、ソフトウェアの開発を請け負うとき、ほとんどの場合、要件のおおまかな項目が列記されたものに基づいて契約されていて、仕様への展開は、契約後に行われることが多い。請け負う側に、仕様に展開する能力が不足していることもあるが、発注側にもこのことについての問題意識がない。

 そのため、設計が進む中で仕様が明らかになったところで、先の見積りと大きく食い違うことが見えてきて問題になってしまう。状況によっては話し合いの場が持たれて、再見積りが行われたりもするが、請け負う側で負担することが多いようだ。そのため、どうしても最初の見積りのところで膨らませようとするが、仕様にブレークダウンされていない以上、いい加減な見積りにならざるを得ない。その結果、双方ともに納得する見積りにはならない。

 同じようなことが、企業の合併や統合の際にも見ることができる。華々しく「統合」や「合併」の記者会見が行われたものの、実際に統合や合併の作業を詰めていく中で、いろんな矛盾や障害が表面化し、半年後に「破談」の発表となる。なぜ、最初に記者発表する前に、もっと中身を詰めておかないのかと思う。先日も、保険会社で起きた。

 「業務提携」の場面でも同じことが起きている。ヤマダ電機がダイエーの売り場に出店するのを機に、ダイエーの社員の処遇で食い違いが表面化した。ダイエー側はもともと社員なので「出向」扱いを求めたのに対して、ヤマダ電機の方は「契約社員」の扱いを主張したよだ。揚げ句は出店取り止めとなり、さらには法廷にまで持ち込まれようとしている。

 合併などの場合は、必ずしも相手側の内部事情について早い段階で知り得ない可能性もあるが、ダイエーとヤマダ電気のケースでは、事前に合意すべき項目の詳細(仕様)を詰めておくことはできたものと思われる。要するに、「仕様」というものに対する認識がないのだろう。

 ジャンルは違っても、要求を仕様にブレークダウンする技術は共通している。

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