庵主の日記2

2003年01月09日 配当課税を廃止したアメリカ

 アメリカ政府が株式の配当にかかる課税の廃止を打ち出した。昨年のエンロンに始まる株式市場に対する不信などから個人投資家の株式市場離れを食い止めるのと、景気の下支えをねらったものと思われる。新聞報道によると、減税効果は向こう10年間で3000億ドル以上と見られている。

 アメリカでは所得階層の上位20%が個人保有株の42%強を保有しているという。彼らの所得税率は既に最高税率(35%)に達しているとみられるため、35%の配当課税分が手元に残ることになる。「金持ち優遇」と言われればその通りだが、彼らがアメリカの消費経済を支えていることも確かである。

 もともと株式の配当課税は「2重課税」になっていて、主要国でも問題にはなっている。企業はその期間で出した利益から税金を払った残りを会社に残したり、配当金として株主に分配する。つまり「配当金」には既に課税されており、それが個人の「所得」となって再び課税されるために「2重」に課税されることになる。もちろん、日本でも事情は同じである。現在は10%の軽減措置はあるものの、4月から実施される源泉徴収制度を選択した場合は、逆に軽減措置は使えない。日本の政策は時代に逆行していて、何とかして国民からお金を巻き上げようとしているのである。(2重課税の問題は、他に「ガソリン」などもあるがここでは触れない)

 株式配当の2重課税を防ぐ究極の方法は、今回のアメリカ政府がとった方法の他に、法人税を廃止する方法がある。本来は、こっちの方が分かりやすい。企業の利益は、最終的には「個人の手元に還流される」という考えに立てば、こちらの方がすっきりする。日本企業の競争力の面からも有利になるし、第一、株主に対する配当を増やせることで、本当の意味で株式市場に資本を引き寄せることができる。日本政府も、「株式市場の活性化」をうたっているのだから、一気にここに持っていくことで、郵貯に塩漬けになっている個人資金を国内企業の資本の方に回せるし、郵政事業の問題の解決にも効果があるだろう。

 残念ながら、政府が叫んでいる「証券市場の活性化」とは、「市場」そのものではなく「証券業界の活性化」である。本当の意味で「市場」を活性化するというのは、個人の資金が資本として「投資」することであり、それは株式の「長期保有」を前提とする。今のような売買利益を前提とする資金は投資ではなく「投機」になってしまう。企業もこれは望んでいないはずである。「投機」を望んでいるのはおそらく証券会社だけである。

 今回のアメリカの「配当課税の撤廃」は、今後の株式市場のあり方や税制にまで議論を呼びそうである。

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