庵主の日記2

2002年12月20日 正義はどこにあるのか?
 「西宮冷蔵」という会社をご存知だろうか。雪印食品の牛肉偽装を告発した冷蔵会社である。ここが、経営の危機に陥って11月に廃業した。同11月には、“虚偽の在庫証明を作成した”という理由で、所轄官庁(国土交通省)から7日間の営業停止処分をくらった。たしかに結果として虚偽の在庫証明書を作成したのかも知れないが、「雪印食品」という「力」を考えれば、断れない状況にあったことは容易に想像がつく。本来、この種の告発行為を保護するために、「内部告発保護法」の成立が急がれているのだが、成立の見通しは暗い。というよりも、成立させたくない輩が動いている。

 西宮冷蔵の経営の危機は、営業停止(11月3日から)よりも、7月ごろから始まった売り上げの減少にあるようで、売り上げが前年比の40%に落ち込んでいたという。食堂や弁当屋が営業停止をくらうような食中毒の事件を起こしたのであれば、信用を失うのは当然なのだが、「西宮冷蔵」は、いわば倉庫会社で、顧客の言うままに在庫証明を書いただけである。それを反省し、告発したことで虚偽の在庫証明書を書いとして処分されたのである。正直に「私は顧客に言われるままにウソを書きました」と言ったら処分されたのである。今の日本においては正直すぎたのかも知れない。「営業停止処分」は、正直さの証明書みたいなものである。

 だが、現実には、契約が6割も減ってしまい、経営が成り立たなくなってしまった。正直さが災いしたという形になっているが釈然としない。考えられることは3つある。
1)単純に「営業停止」という処分に顧客が反応した。
2)6割の依頼企業は、雪印食品のように告発されると困るようなことをしていた。
3)大手の食肉企業や所轄官庁からの圧力で顧客が取引を中止した。
最後のケースは「見せしめ」あるいは「報復」というやつで、日本ではしばしば行われるのだが、内実は報道されることはない。

庵主の日記の目次に戻る