庵主の日記2

2002年7月24日 韓国でも「5%ルール」が使われていた

 新聞報道によると、韓国のLG電子を初め大企業の大半が同様の制度を作動入していると言う。「5%ルール」というのは、毎年の業績評価で下位5%になった社員に対して、退職が勧告される制度で、GEが採用していることで広く知られるようになった制度である。

 新聞では「希望退職を求める」となっているが、現実には「指名解雇」になる。韓国は、97年の金融危機でIMFからの融資を受ける際に、半ばどさくさに紛れて、2か月前の通告で解雇できるという「解雇法」を通したので、この制度が導入できるのだが、日本の場合は、1ヶ月前の通告で指名解雇できる労働基準法第20条が、東京高裁の判例で封印されているために、「5%ルール」のような制度の導入は不可能である。

 解雇されないことに慣れきった日本の労働者に、このような「5%ルール」という制度をどう思うかと聞くと、殆どの日本人は「それは困る」というだろう。だが、企業が自分たちが得意とする分野での財やサービスを提供して利益を上げる集団だと言うのなら、「5%ルール」は、むしろ当然のルールである。生産性を上げようとしない人が混じっていることによって、その企業は社会に貢献できないし、ひどいときには、公的資金の投入や債務の棒引きなどによって、社会に支えてもらうということになってしまう。今の日本は、まさにそのような馬鹿げた状態である。

 この「5%ルール」という制度は、知識労働者の停滞を防止するにはうってつけの制度である。知識労働者であるべき職種に、そのスタイルを維持できない人が多く交じっている。そのために、求められる生産性が出せず、コストアップに繋がったりしている。本来出来るはずの期間の2倍もの期間と4倍もの工数をかけて、平気な顔をしている。

 21世紀、日本が知識産業立国を目指すのであれば、「5%ルール」のような制度に基づいた指名解雇が出来ることは不可欠なのである。指名解雇が出来る社会ということは、逆に再就職も容易であるということに気付いて欲しい。もし、適切な業績評価が出来ない状態で「5%ルール」を採用しようものなら、有能な人は見切りをつけてさっさと辞めていくから、無能なマネージャーを抱えた企業は整理される。結果として、有能なマネージャーを抱え、うまい仕組みを持った企業のところに、有能な人が集まることになる。

 隣の韓国で「5%ルール」が導入されていることで、韓国企業の競争力は、今後確実に高くなっていくのに対して、今の日本の制度では、追いつけなくなる可能性が高い。

 日本には1400兆円(この数字はまゆつばもの)の国民資産があると言われているが、いつまでも労基法第20条を封印したままだと、あっというまにどこかに消えてしまうだろう。

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