庵主の日記2

2002年6月20日 極楽トンボ

「みずほ」が再発防止策と合理化策を公表したが、誰も評価していない。もちろん、私も評価しない。ソフトウェアの世界でも、バグに対応した後、「再発防止策」というものが作られることがあって、ときどき、それを目にすることがあるが、多くは「原因」に至っていない。だから、一向に改善されない。

たとえば、「新しい機能の追加に伴って、既存機能の一部を変更するのを忘れたから」では、全く話しにならないのは読者もお気づきでしょう。では「新しい機能の追加に伴って、既存機能の一部を変更する必要があることを指示するのを忘れたから」はどうだろう。だいぶ「原因」に近づいているが、それでは、この次に同じように新機能の追加があったとき、うまく指示できるだろうか。答えは否である。この問題には、複数の「原因」が絡んでいる。

一つは、“こっちも変更してね”と指示する方法があったかどうか。たとえば、新機能の要求仕様に関連して、変更箇所があることを表現する書式になっているかどうか。もう一つは、そもそも“この”新機能に関連して、既存機能の“ある”部分が影響を受けることに「気付く仕掛け」があるかどうか。多くの場合、そもそも、“そこ”が関連していることに気付く方法がないのである。だから、その仕掛けを用意するところから改善が必要で、なのここまで踏み込んだ対応が為されなければ、再発防止にはならないのである。つまり、既存のプロセスに変更が加えられなければ、再発防止策にはならないのである。

「開発遅れの情報が上に上がらなかったことが原因」で、「そのようなことの無いようにします」というのでは、全く話しにならないことに気付かなければならない。それでは、「新しい機能の追加に伴って、既存機能の一部を変更する必要があることを指示するのを忘れたことが原因なので、今後は、きちんと担当者に指示します」と言っているのと同じである。この程度の「反省」なら猿でも出来る。何ヶ月も掛かって、この程度の「策」しか書けないとすれば、今回の事故は、起こるべくして起こったと言わざるを得ない。これが、多くの人のお金を預かっている企業の経営者なのだろうか。極楽トンボも甚だしい。

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