庵主の日記2

2002年6月10日 欺瞞だらけの「株の銀行窓版」のアイデア

 4月に、銀行預金(定期)のペイオフが実施されたことで、預金の流れが変わった。今まで、利息はゼロに近くても、安全ということで銀行に置いていた資金が動いた。大手銀行といってっも必ずしも安全ではないと判断されたようだ。あぶれた資金が国債や株に流れ込んだことで、長期金利の上昇を押さえ込む形になったし、限度を超えた空売りの防止策と併せて、低迷する株価を少し押し上げる効果に繋がったようだ。

 調子に乗った金融相は、今度は銀行の窓口で株を売ろうと言い出した。本来なら何の問題もない。いや、もっと早く実施していてもおかしくはない。だが、我が国では、株価の形成は人為的に操作されることは皆知っている。かつて、山一証券が倒産したとき、国民はそのことを改めて認識した。だから証券市場から「個人投資家」の資金が逃げたのだ。証券会社そのものも、素人の個人客に対しては、売買を繰り返えさせて、自らの利益確保を優先した。それは今でも変わらない。いや、山一の件で変わったと思ったが、変わっていなかった。要するに、投資家に「長期保有」をさせない方針なのである。

 「安定」や「有利だ」といって「投信」に誘っておきながら、数年したところで、突然解約手数料を引き上げ、5月以降の解約は目減りする仕組みを作って強引に乗り換えさせるやり方は、昔と変わっていない。口では反省したといったが、その時には既に、売買を繰返す方法が、そこに居る人たちの遺伝子に組み込まれていて、結局は元の状態に戻ってしまった。

 本当に「株の銀行窓販」を実施仕様というのであれば、株の配当を増やすように制度を変えればよい。たとえば、配当資金に掛かる税率を下げることで、企業は配当を増やす方向に動くだろう。これだけで、個人の資金が株に向かう。そうなれば国民の方から、銀行の窓口でも買えるように要求してくる。しかも国民の株への投資は、基本的に長期保有に繋がるだろうから、今のような売買手数料を目論んだ腐った証券会社の体質も変わらざるを得ない。

 ここまで来れば、何故、民間と官庁が乗り気でないのかが分かるだろう。一般の個人投資家は、株の売買の世界には入れない。あくまでも、長期保有が前提だ。投資資金に対する配当が、他の金融商品よりも高ければ、

 1400兆円の資金が動く。だが、これでは今の証券会社は儲からない。だから民間は賛成しない。もう一つ、郵便貯金の利息よりも、株の配当の方が多いとなれば、資金が逆流する。ペイオフの実施で、折角郵貯や国債に流れてくれた資金が逆流すれば、日本の国家予算は成立しないし、長期金利は暴騰する。だから、官も賛成しない。この結果、日本では、株式市場が常に「ギャンブル」の場になりやすいのである。

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