庵主の日記2

2001年8月31日 堰を切ったリストラ

 大手電機業界を中心に、連日のようにリストラ策が新聞紙上を賑わしている.もっとも、過半は、海外の関連法人であるが、3〜4割は国内の工場や事業所の勤務者が対象になっているようだ.それでも、国内のリストラ規模はまだまだ小さい.この業界は、既に競争力を無くしたはずの半導体にしがみついていたり、低コストを求めて海外進出し、その結果産業自体が空洞化する中で、唯一の頼みであった「IT」の総崩れによって、大きなダメージを受けたことは確かである.国内の雇用も、これから影響が表面化するだろう.

 もともと、「IT景気」はインフラ整備がある程度進んでしまうと終わるだろうと見ていたが、製造能力が大きかっただけに、崩れ方も予想以上に早かった.それまで20万円までが損金に計上できたものが10万円に戻ってしまったことも、設備投資意欲を削いだかもしれない.いずれにせよ、日本はそのような底の浅い「IT」を、経済の浮上の頼みの綱としたわけである.

 さて、その頼みの綱が切れたわけだが、このときに、どういう形で企業をスリム化するかで経営者の能力が問われる.もともと、我が国においては企業側に「解雇権」が無いために、パートや派遣社員、契約社員という雇用形態を増やすことで氷河期に備えてきた.だがこのことが、正社員と契約社員との間で、仕事やスキルに対する意識に差がでるという副作用をもたらしていて、正社員の能力が契約社員の能力を、必ずしも上回らない状態が起きている.もし、そうだとすれば、氷河期を迎えて、契約社員らを整理することで、企業の競争力をも大きく削いでしまいかねない.契約社員の中に本当に残したい人が居たとしても、現在の法制では、彼を残して社員を解雇することは難しいだろう.その上、社員を解雇するにも、「希望退職」という形を取らざるをえない以上、残って欲しい人を意図的に残す方法もない.

 となると、我が国での企業経営は、順風のときは良いが、逆風になったときに経営者の「意図」で短期間に企業を建て直すことは容易ではなく、弱体化していくのを見ているしかないかも知れない.まさに経営に対する信頼が問われているのであるが、今、吹き荒れ始めたリストラで、そのことが確認されるだろう.

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