庵主の日記2

2001年8月31日 的外れな証券市場活性化策

 株式市場の低迷を受けて、証券税制の見直しの論議が高まっているが、例の如く、小出しの出し惜しみ案であるし、今議論されている案では、預貯金に偏重した個人の金融資産を資本市場に振り向けることはできない.企業の資金調達の方法を、間接金融から直接金融にシフトさせることで、証券市場を活性化するという本来の目的も達成しない.それどころか、ますます売買益の獲得に偏った、いびつな市場へと向かってしまう.

 個人の資金を集めるには、このような姑息な手段ではなく、株式投資に対する配当を増やすことである.投資にはリスクを伴う以上、定期預金と比べて遜色ない程度の配当が確保されなければ、個人の資金は流れ込まない.長期保有を前提としたものでないと、多くの国民は参加できないし、日本版401Kも機能しなくなる.

 今の企業税制では、税金を払った残りから配当金を捻出する仕組みである.この仕組みの中では、十分な配当原資を確保することは困難である.配当に回すことを条件に、たとえば法人税を半分にするなどの「改革」が必要である.

 現状の株式投資は、「市場」への投資になっていて、証券会社が儲かる仕掛けになっている.今、俎上に上がっている証券市場の活性化策も、その方向に沿ったものである.バブルがはじけて山一が泣いたとき、国民は証券市場のいびつな「仕組み」を学習し、そっぽを向いた.当時、証券会社もそのことを反省したかに見えたが、いつの間にか、その「感覚」は風化してしまったようである.

 政府・与党は、この改革案は、証券会社を潤すだけで、一般国民の資金が資本市場に流れ込まないことを承知の上だろう.その上で、そこのような小手先の改革を進めようとしているのだろう.

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