一口サイズのスケジュール

 この種の取り組みを成功させる秘訣の一つは、作業アイテムの大きさを、その時点で手に入る時間の単位に合わせることです。

 この種の取り組みでは、一般に、若い人の方が成功率が高いのですが、その理由は、

  1)割り込み作業が少なく、作業に専念できる時間がまとまって確保できる
  2)以前の“思考パターンの川”が浅いので塞き止めやすい

ことにあります。

したがって、経験年数も長く、組織の中で、ある程度の役割を負っている人の場合は、どうしても会議などの割り込みが多くなり、その日の予定の作業に集中できないために、スケジュールを外してしまう危険が高くなります。この場合、問題の人のチーム内での立場もあって、誰も言い出せずに、最悪の状態に陥る危険があります。

 人は一般に意識の「拡散」は容易にできるのですが、そのあと「集中」には時間がかかるものです。特に気分が削がれたりすると、回復に必要以上に時間がかかってしまいます。その日の朝の最初に、“○○さん、悪いけど先に□□さんの仕事を手伝って”なんて言われると、その仕事は午前中に終わったとしても、午後の立ち直りは厳しいものです。

 この他に、集中に時間がかかる原因として、作業の大きさが、その日の残りの時間に合わない場合も、気分の回復を遅らせてしまいます。その日の午後に予定していた5時間と見積もられた作業も、突然の会議の招集で崩されてしまい、その上、1時間の予定が3時間も掛かってしまい、終わったときには既に4時。このような状況では、ほとんど予定の作業に着手できないまま(というより、その気にならないまま)、その日は何となく過ごされてしまいがちです。ある程度のレベルでスケジュールが書ける人でも、この種の「気乗り」の問題は避けられないでしょう。

 こうして今日の予定の作業は明日に繰り延べられていくのですが、このとき作業が1時間程度のアイテムの組み合わせになっていれば、残された時間を考えて、あまり躊躇しないでその中の作業を選んで集中することが出来ます。大事なことは“取り掛かりやすくする”ことなのです。一瞬でも“どうしようかな”といった“躊躇”が入れば、もう取り掛かれなくなります。“躊躇”の入る隙間を無くす工夫が重要なのです。

 「まず何よりも肝心なのは、思いきってやり始めることである。仕事の机にすわって、心を仕事に向けるという決心が、結局一番難しいことなのだ」とは、カール・ヒルティの幸福論のなかの“仕事の上手な仕方”の一節です。要するに、手を付け出したら気分が乗ってくるものだということですので、取り掛かれない理由を並べられてしまう前に、出来るだけ手を付けやすい状況を作ることがポイントです。

 まとまった時間が確保しにくい人には、レストランでゆっくりと食事をするのを諦めてもらって、しようがないから歩きながら食事が出来るように、最初から「一口サイズ」に切っておいてください。結構おもしろい効果があります。

 もちろん、常に一口サイズにする必要はありません。その人の手に入る時間の塊の大きさを考えて工夫してください。上手くスケジュールが書けるようになった人でも、“必要”を感じたら、躊躇することなく「一口サイズ」に切って下さい。一定期間でも有効です。


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