スケジュールを練り直す

 折角立てたスケジュールが崩れていくのは、多くの場合、“詰めが甘い”ということになります。実際には何度かそのような失敗を繰り返しながら、不測の事態を少しでも早く読む力を手に入れるのでしょう。それでも間近になって予定していない事態が発生したときには、その影響を最小限に食い止める「工夫」が必要です。

 予測の精度を上げるには「練り直す」ことが必要です。

 たとえば、最初はとても2ヵ月では終わらないと思っていたものが、とにかく作業を定義し、ブレークダウンしながら作業量を見積もっていく。その結果、なんと2ヵ月で収まってしまうことに驚き、自分に新しい力が手に入ったものと錯覚してしまうのです。

 しかしながら、これは新しい能力ではなく、単に物事を整理し、曖昧な部分を削って、期間に当てはめただけで、ちょっとその気になればここまでは誰でも出来るものです。この状態は今まで枯れていた「思考の川」に決して本格的に水が流れたのではありません。

 「思考の川」に水を流すためには、出来上がったスケジュールを少なくとも2、3日かけて作り直すことが必要です。ここで“練り直す”と言う行為が必要になってきます。この“練り直す”ということは“否定”することでもあります。

 「この作業は本当に2日かかるのか?」

 「ここで求められているドキュメントの精度は?」

 「もっと簡単に済ませることは出来ないか?」

 「作業の順序を変えて見たらどうなる?」

 「この作業を先にやっておけばもっとはっきりするだろうか?」

 こうして一旦作られたスケジュールを自分で否定しにかかることで、自らの「思考の川」に水が流れ始めるのです。

 多くの人は、自分で考えたものを自分で否定しようとしません。でも、「考える」という行為は、「否定」や「疑問」がトリガーになって進められるのです。そして自分に語りかける行為なのです。

 一度目に作られた案は、それまでの思考パターンに基づいているのに対して、こうして否定しながら練られた2度目の案は、古い思考パターンの殻が破れて、部分的にも新しい思考パターンが顔を覗かせたものとなるはずです。ただし、この一回だけでは「思考の川」はすぐに干上がってしまいますので、このあとの実施の段階に入ってからも、随時水を流す必要があります。

  「思考の川」 ー 『大小のこと、みなすべからく智を用うべし。

            智はなお水のごときなり。流れざれば腐る。

            凡百、智を用いざれば、大事の際に臨みて、

            なんぞ智の来たるあらんや』

 そうです! 流さなければ腐るのです。


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