1回目は捨てる!

 

 詳細スケジュールで第一に大事なことは、「第一案は捨てる」ということです。特に、このような取り組みに初めて臨んだ人の場合、最初に作られたスケジュール(第1案)は、一般に「出来そうな案」の域を出ません。もちろん、本人は一生懸命に考えて立てたスケジュールですが、実際にはせいぜい“これならなんとか成りそうだ”という程度のものです。むしろ多くの場合は“希望的な案”であったり、単に“その期間で仕上げなければならない”という案であったりすることの方が多く見られます。これは、見掛けは良くても、その中身は今までの思考に引きずられているのです。

 最初のうちは、ブレークダウンされた作業に対して必要な時間を見積もるときに、“これくらいで出来るだろう”とか“こんなもんだろう”という気持ちが働いていることに気付いていません。無意識のうちに「今までの思考」で見積もっているのです。言い換えれば「姿を変えただけ」のスケジュールでもあるのです。

 この種の取り組みの殆どが成功しない理由の一つがここにあるのです。多くの開発組織では、このような「詳細スケジュール」を初めて見せられたとき、“素晴らしい!”とばかりに歓迎し、“さぁ、これに沿って進めてくれ!”といって、その未熟なスケジュールを推進してしまいます。もちろん、書いた本人も上手く書けたと思っているわけですから彼もその気になってしまいます。

 しかしながら、その「案」は外見こそ求めるものに似ていても、それを生み出した本人の思考パターンは、殆ど以前のままなのです。その結果、1週間もすれば「スケジュール」は遅れだし、遅くとも2ヶ月で放棄せざるを得ない状況に陥ってしまいます。

 これが「第一案」の落とし穴なのです。

 あくまでも「第一案」は、思考パターンを変えていくための足掛かりとして使うべきであって、実際にそれに沿って作業に着手してはならないのです。もし「第二案」も本物ではない場合は、これも捨てなければなりません。

 厳密なスケジュール管理を成功させるには、古い思考パターンから脱却した「案」を生み出すまで、否定して練り上げることです。もっとも、示された「案」が以前の思考パターンに基づいたものか、そこから脱却したものかを見極めることは容易ではありません。エンジニアの心理、いや人間の心理に精通しなければ、作業項目が細かく並べられたスケジュールの裏にあるものを見抜くことは出来ないでしょう。その意味で、適確な指導が必要になってきます。


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