今の作業方法で十分上手く行っている。それでも必要か?
“十分上手く行っている”という状況の判断が問題です。一般に、組み込みシステムの開発の場合、ある程度、同じような作業が行なわれることもあって、作業に対しても慣れがあるようです。胸を張れる状態ではないとしても、そんなに悪いとは思っていない、ということかも知れません。
例えば、
遅れの範囲はどの程度ですか?
スケジュールを何度も書き直していませんか?
バグの件数はどの程度でおさまっていますのか?
それは、意図した結果ですか?
という質問に対してはどうでしょうか?
あるいは、
十分、新しい設計法や開発方法などの勉強ができていますか?
多くの残業を前提としていませんか?
特定のスーパーマンに依存していませんか?
という質問にたいしてはどうでしょうか?
別に「CMM」にこだわる必要はありません。CMMと関係なく上手く行っているとすれば、そこには「ベスト・プラクティス」が存在しているということになり、それらをもっと発展させればいいと思います。逆にCMMはそのような経験から編み出されたものでもあるのです。市場の要請は一時も止まることがありません。競争相手もあり、いつどこで大きな仕様の変更に遭遇するかも知れません。そのとき、直ちに対応できるように備えておけばいいのです。
ただし、“上手く行っている”というのが、合理的な根拠がなかったり、将来の変化に備えていなかったりすると、大きな仕様変更や組織の変更で、一気に崩れてしまう危険があります。上手く行っているという状態の時こそ、将来に備えて色々な取り組みに挑戦できる時間もあるわけです。一度、予期しない変化に遭遇し、スケジュールが崩れたあとでは、既に時間に追われる状況に陥っている可能性が高く、このような取り組みに着手することが出来なくなる危険があります。
常に将来の布石を打っているかということです。その評価は、10年後に為されることでしょう。