今までも、プロジェクト管理などに取り組んできたが、結局は実現しなかった。


1999.1.2 に内容の一部を追加しました)

 実現しなかったということは、いつの間にかそれまでの習慣に戻ってしまったということであれば、実現しなかった理由が問題です。CMMであろうと、今まで実現しなかったいろいろな取り組みの一種としてイメージすることは可能ですので、そうなると、同じ結果がでるでしょう。

 例えば、

1)部分しか取り入れていない?

スケジュール管理だけを取り組んでも、その前提となる見積もりが出来ていなければ実現しません。さらに、見積もりの前提として、要求が明らかになっていなければ、見積もることは出来なくなります。また、要求管理を取り入れていなければ、途中の変更に対して、その影響を見積もる方法がなく、結局、スケジュールは崩れていくはずです。

2)全体として上手く行くことがイメージされていない?

単に、本に書いてあるからとか、他で上手く行っているようだとか言うだけで取り組んだときには、その取り組みのテーマの事ばかり考えていて、作業の全体が上手く行く(流れる)イメージが欠落していることがあります。少なくとも、キーになる人が頭の中で、最後まで作業が流れる様子を浮かべることが出来なければなりません。

3)上手くやれる人がいない状態で取り組んだ?

文献の世界と現実は違います。コンサルタントと云っても必ずしも、その違いまで踏み込んでいるとは限りません。“こうでなければならない”という「あるべき論」をかざすだけで、それを実現できなければ、あなた達の能力が低いという姿勢で望むコンサルタントもいます。

そこに居る人たちは、少なくとも、その時点では全員が「上手くやれない人」である以上、そこのテーブルに広げられた「プラン」が実現するかどうかを判断できない可能性があります。自分たち自身も、「こうでなければならない論」にはまってしまうのです。

4)現実から遊離した取り組みであった?

プロジェクトの途中から取り組む場合や、組織のメンバー構成に不足があったり、事前の学習が省かれている場合に、現実離れした取り組みが設定されてしまうことがあります。おそらく、実際には、何回かに分けて取り組むとか、初期の頃は、先ずは習慣を変えることに重点を置くとかして工夫が必要なのです。

5)要求管理に手を付けていない? (1999/1/2) 掲載

CMMの神髄は、その最初のKPとして「要求管理」を持ってきたことです。つまり、「要求」について、顧客と共通の認識をもつことが、成功の前提なのです。さらに、その要求を実現するために表現された「要求仕様書」があって、はじめて「見積もり」が可能となり、実現性の高い「計画」が立つのです。

もちろん、全ての要求が、プロジェクトの開始時に合意に達することは期待できませんので、ある程度のところで「見切り発車」となりますが、それをカバーするのが「要求管理」の仕組みでもあるのです。

実際の開発現場で、この「要求」の部分に何ら手を付けないまま、プロセスの改善(実際には何を改善したのかよく分からない)に取り組もうとしている光景を目にすることがありますが、これは最初から実現の合理的根拠を持っていません。