導入する事でどんなメリットがあるのか?


 CMMの狙いは、「組織の開発能力」を引き上げることにあります。したがって「導入」という時は、そこに示されている「能力改善のためのプログラム」に従うと宣言することになります。

 これからは、日本の組織も、エンジニアやマネージャーの流動化が始まります。その結果、開発の方法が個人に属していれば、流動化と共に組織は崩壊するか、市場に対する組織としての約束を果たせなくなります。また、これからは、外から入ってきた人が、このような「標準の作業」を身に付けている可能性がありますが、折角の能力を活かせなくなります。

 これまで提案されて来た「プロジェクト管理」の類の殆どは、組織に定着させることを明確に意識したものではなく、そこで必要なスキルを全部見せて、「これだけ必要ですよ」というものです。CMMは、そこに「プロセスの成熟度」という考え方を持ち込むことで、それらの修得を体系化し、組織として修得することを狙っています。

 「時を告げる人」は大事ではありますが、「時を告げる仕組み」の方がもっと大事なわけです。そして、そのような仕組みの中でこそ個人の能力が、より一層発揮されることを認識すべきです。現に、そのような仕組みが無いことで、数少ない有能な人が、ルール化されていない仕様の変更に振り回され、作業の調整に翻弄されているではありませんか。そのような人の能力は、「時を告げる仕組み」の中でこそ生きてくるのです。

 現状は、この「仕組み」を持たないために、多くの開発組織では「デス・マーチ」に陥っているのです。言い換えれば、CMMはデス・マーチに陥らないための方法でもあるのです。

 21世紀を前にして、厳しい市場の要請に応えるには、CMM導入できるかどうかという議論ではなく、どのようにして導入するかという議論が必要であり、さらに、それ以上に上手い仕事の仕方を手に入れる必要があります。