実作業とかけ離れている。できる見通しが無い


 すでに混乱の状態にある組織にとっては、CMMは理想の花園に見えるかも知れません。要求仕様書の様なものは蔭も形もないし、スケジュールなんて、最初の段階で誰かが書いた全体のが1枚、申し訳なさそうに、目の前に貼られているだけで、これ以外には書いたこともない。成果物の「標準」というのは、過去に決めたことがあるが、上手く行かないまま、そんなものはいつの間にか無視されている。今更、蒸し返しても白けるだけ。外注に、いろいろと注文を付けようものなら、「納期が遅れる」とか「コストが掛かる」と言われる。成果物や作業の進め方について何か言おうものなら、「この忙しい時に仕事を増やさないでくれ」と逆に現場から反撃を食らう・・・。

 要するにこのような状態では、CMMに取り組むのは容易ではありません。

 このような組織は、先ずは、的を絞って取り組みの効果を体験することです。たとえばバグが沢山出ていることが混乱の最大要因であるとすれば、スケジュールのことは後回しにして、バグを減らすことに的を絞って「プロセス」を組み直してみることです。最初は、あまり荷物を背負い過ぎないように注意しながら「御利益」をイメージして進めていくことが大事です。

 もし現場の人たちが本当に現状のままでいいと言うのなら、残念ながら別の方向からの意識改革に取り組む必要があります。私にいわせれば、この状態を続けているのは、他に選択肢がないからです。顧客もマネージャーも選択肢がないから、結果として「許され」ているだけです。

 間もなく、日本も猛烈な生産性の競争に入るはずです。金融機関の整理統合を始め、企業への外国資本の導入は、結果として日本を世界基準の生産性の競争に巻き込むことになります。生産性の差が5倍も開くようでは、事業を続けることは出来なくなります。その時点でCMMに取り組もうとしても、3つの不足(人材、資金、時間)が障害となって手遅れとなってしまうでしょう。このような組織に対しては、この方面からの動機づけしかないでしょう。