日経ビジネスの4/21号に、香港での日本人労働者の給与が低下していることが報道されています。その最大の原因は“専門性”の欠如だという。
例えば、経理という職種でも、単に帳簿が書ける、複式簿記が分かる、という程度では、通用しなくなっている。報道によると、最近の香港では簿記の2級や1級程度ではダメで、“監査の一歩手前”ぐらいの能力がないと『経理が出来る』ことにならないらしい。
通用しない理由は単純である。帳簿づけしか出来ない日本人を雇うと、少なくとも、判断できる人を別に確保しなければならないが、“監査の一歩手前”の人なら、余分な人を雇う必要がなくなる。その分、給与を5割増ししても採算はとれる。それぐらいのレベルがあれば「財務諸表」も扱えるだろう。
もっと簡単にいえば、日本では一般の企業内での経理や総務、人事などは「間接部門」ということで、生産性を余り気にしない状態で多くの人を雇っている。その世界では「経理のプロ」というのは、会計士であり、そのような人は、会計事務所や監査事務所にしか必要ないと思っていた。
だが、企業が生産性を重要視し始めたとき、経理部門と言えども、“帳簿が書ける”程度のレベルでは要件を満たさない。第一、そのような人に、高性能のパソコンを与えても、鉛筆代わりにしか使えないだろうし、適当なアプリを自分で探してくることなど、望むべくもないだろう。
資本が自由化し、海外からの企業の進出が自由化すれば、“即戦力”が求められるのは当然であるし、「プロ」の集団で活動する企業がでてくる。そうなれば、日本にも確実に「労働者市場」が成立する。それぞれの職種において「プロ」が求められる。経理はもちろん、人事や営業も「プロ」としての活動が求められるし、マネージャーも「プロ」であることが求められる。特に“マネージャー”は、他の職種と違って最初からそれなりの「経験」や「知識」が前提となっているので、「プロ」以外に職種として成立しないだろう。
21世紀は、プロでない人は仕事を探すのは容易ではないし、たとえ見つかったとしても、それなりの待遇しか得られないのは当然である。しかもある一定期間に「プロ」としての認知を受けなければ、仕事を失うことも考えられる。
ましてや、技術者が“アマチュア”であっていいはずはない。ただ、“マネージャー”と違って、エンジニアには必ずしも最初から「プロ」を求めることは出来ないかもしれません。もちろん、分野によりますが、少なくとも、ソフトウェアの世界や、一般の電子技術の分野では、ある程度の「アマチュア」を受け入れることになるでしょうが、先にも、述べたように一定期間に「プロ」としての認知を受けなければ、それなりの仕事しか与えられないでしょうし、別の可能性のある人に置き代わるでしょう。
その「波」は、日本のすぐそこまで近づいてきた。その「波」に気付かないで、磯でうろうろしていると、高波にさらわれる。