考えるタイミングを見直す


「この件については来週までに考えてきてください」という課題が出されることがよくありますが、皆さんは一体何時そのことについて考えますか?

残念ながら、1週間後の会議の前日か、ひどいときには直前の昼休みに考えている光景を目にすることがしばしばあります。1週間という時間は、何のために与えられたのか。これでは“2日後”でも変わらないし、むしろ意識が新鮮なだけ、その方が内容が充実するかも知れません。

何れにしろ、1週間という時間の中で、考えが練られることなく思い付いたままの姿で次回の会議に持ちだされることになります。そしてこれについて議論するのですから、いい加減なものです。

このような姿勢からは、決して望ましい方策を得ることは出来ないことは容易に想像出来ます。その結果、例えばプロセスを改善しようという折角の取り組みも途中で頓挫してしまうことになるのです。要するに「ネタ」が切れるのです。

これは「思い付き」と「考え」の違いでもあります。“考える”という行為にはネタが尽きることはありません。でも「思い付き」は簡単にネタが尽きてしまいます。つまり「考える」ことと、「思い付く」ことは違うのです(この件については別の項「“考えること”について」を参照して下さい)。

物事を進展させようとすれば、どうしても「考える」ことが必要です。そしてそれは、ある時間の中で、反芻され推敲されなければなりません。「1週間」という時間の中で行なわれる行為としては、
 1)早い段階で「思い付く」ことを表現してみる
 2)そこで表現されたものに対して、毎日少しづつ「検討」を加える
 3)その時の検討の「角度」を記入しておく
 4)その「角度」を変えて更に想定場面を変えて考える
といった行為が望まれます。

人は「立場」でものを考えます。つまり、立場を変えれば考えることも変わってくるということです。自分の立場からだけではなく、顧客の立場に立ってみたり、上司や部下の立場に立ってみることです。時には家族の立場に立つことも必要かも知れません。立場を変えてみれば、その思考の不思議さに気付かされることでしょう。

そのためには一定の時間が必要です。今日は顧客の立場でとか、明日は上司の立場でといった具合に時間が必要になります。

そしてもう一つの考える工夫は「時間」を変えてみることです。すなわち、「今」の視点だけでなく、1年後とか、このプロジェクトのテストに入る時期を想定してみることです。立場の時と同じように、自分をその「時」に置くことで、違った視点で考えることが出来るものです。

これには少しばかりの訓練が必要かもしれません。でも、それ程難しいものではありません。「成りきる」工夫だけです。オブジェクト指向の基礎を学ぶことなく、いきなり「C++」でプログラミングさせられる苦痛よりも遥かに易しいものです。

もし、長くこの仕事をしたいと思うなら、期限の前日になっておざなりの思い付きでごまかすことを止めることです。そして、毎日考える習慣を付けることです。それは、あなた1人の問題ではなく、あなたの所属するチームのメンバーに対しても影響を与えることを忘れてはなりません。

  8760時間・・・これは1年間の総時間です


これは夜も昼も合わせた時間ですが、この中で1日に1時間考える時間を作ったとしても365時間(4%)に過ぎません。もし、それが1週間に1時間程度しか「考える」ことに時間を割かなかったら、たったの53時間(0.6%)になってしまいます。
ここから、果たして求められているものが得られるようには思えないのです。

人は多くの人に支えられて生きています。だからといって、それに甘えてよいという訳ではありません。生かされながらも各自が懸命に生きなければなりません。それは「社会」に於ける義務でもあります。




「Index of SE の為の講座」へもどる