自分の役割を文字にしてみよう

 職場やチームの中にあって、人はそれぞれ「役割」を担っています。マネージャーという立場であれば当然のことですが、そうでなくて、ソフトウェアの開発要員の一員であっても、自分の「役割」というものがあります。

 開発要員であれば、「役割」の殆どは「分担」部分を実現することになるでしょうが、新入社員でもないかぎり、決してそれだけではないはずです。下のように組織の一員としての「役割」があるものです。もし、考え付かないとすれば、それを知らせない管理者にも問題があるかも知れません。

   1)○○プロジェクトの□□モジュールを、要求通りに完成させること
   2)1年後にしっかりしたレビューに耐えられるように、設計書を所定の様式で書くこと
   3)Cさんがまだ不慣れなため、コーディングやテスティングで必要なアドバイスすること
   4)先行隊としてオブジェクト指向の勉強を進める
   5)チーム・リーダーのBさんの秘術面でのフォーローをすること
   など

 開発要員の中でも、チームリーダーや、プロジェクト・リーダーであれば、「分担」以外の「役割」は見えやすいでしょう。

   1)製品を、予定、および要求通りに完成させること
   2)Aさんを2年後にリーダーが勤まるように育てること
   3)CMMの取り組みを浸透させること
   4)1年後の本格的レビューの実施に備えて「チーム」の意識を浸透させる
   5)メンバーに、仕事の「意義」を体得させること
   6)仕事を通じて、「ひと」を勉強する
   など

 このように、一度、自分の役割を“文字に”してみて下さい。頭のなかで浮かべただけではだめです。どうしても「文字」にする必要があります。書いてみて気付くと思いますが、意外と書けないかも知れません。それでも、諦めずに1週間掛かっても構いませんから書いてみて下さい。

 そうして書かれた自分の「役割」を月に1回でいいですから、机の引き出しから取りだして読んで見て下さい。「何か」を感じると思います。そのとき、自分に正直に従って行動して下さい。

 一度の人生です。この先、30年、あるいは40年、仕事人として社会に「役割」を果そうと思うのなら、是非やってみて下さい。そうでなければ、この変化の時代に自らの「役割」を見出せないまま、時代の波に翻弄される危険があります。

追加)― 97/8/30

 自分の役割を文字にするときに大事なことが一つあります。それは「うまく・・・する」というように“うまく”ということばが言葉が入っていることです。“うまく”という言葉が入っていないと、単に役目をこなすというだけに終わってしまいます。そとからみて“頑張っている”姿を見せる方向に行ってしまう危険があります。しかしなばら、それが必ずしも顧客の求めるものとは限りません。本人は決してサボっているわけではないのですが、仕様の詰めが甘かったりして、納期が遅れることになります。

 これに対して、“うまく”という言葉は、作業の工夫に繋がり、そのための学習や投資の行動を引き起こすでしょう。どうすれば昨日よりも今日の方が上手くできるかを考えるでしょう。どうすれば1日の遅れもなく仕上げることが出来るかを考え、工夫してくるでしょう。どうすれば、もっと分かり易い仕様書になるか考えてくるでしょう。どうすれば、顧客の要求を外さないような書き方ができるか考えてくるでしょう。

 自分の役割を認識すると同時に、その役割を「うまくこなす」意識が重要なのです。




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