タイトル・・「わがSE人生に1片の悔いなし」
出版社・・・技術評論社 (技評SE新書 016)
新書判/157ページ
価格・・・・定価 840円(+税)
ISBN978-4-7741-3636-3

発売・・2008年10月 日


40年前、コンピュータの黎明に未来を感じてこの世界に入ったものの、最初の3年間はことごとく失敗の連続で、「自分にはこの仕事は合わない」と啖呵を切って一旦はこの世界から逃げ出したたのです。逃避先での生活の中で論語の1節と出会ったことがきっかけで、自らの人生を見つめ直し、1年後に元の世界に復帰しました。

もちろん、同じ失敗を繰り返すわけにはいきません。それでは笑い者になってしまいます。以前の失敗の原因は「要求仕様」にあったことは認識していましたので、復帰後はソフトウェア・エンジニアリングやコンピュータサイエンスの復習をしながら、要求仕様のあり方を求め続けてきました。自分の持ち時間のすべてを仕事と勉強(研究)に投入してきました。

その中で先に公表した「USDM」による要求仕様のまとめ方の大筋を掴んだのです。お陰でそれ以降、仕様のトラブルは1件も起きていませんし、その頃から20数年間、1件の納期の遅れも起こすことなくやって来れました。

組み込みシステムの世界に転向したあとも、2年目に依頼された派生開発の案件に対して、派生開発専用のプロセス(XDDPとして公表済)を考案し、USDMと合わせて、その後の派生開発の要求に対してもすべてミートすることができました。しかも、組み込みシステムの時代は、メインの顧客に対しては、ほぼ週35時間をキープできたのです。これによって、仕事で疲弊することなく新しい技術をキャッチアップし、現場に適用するための研究を続けることができたのです。しかも家庭を犠牲にする必要もありませんでした。

こうした状況の中で、「CMM」と出会ったのです。CMMは私の人生を想像もしなかった方向に誘いました。CMMと出会わなければ、それまで手に入れたいろいろな方法を公表することはなかったでしょう。それが、日本のソフトウェア開発の現場にとって有効な方法であることに気付くことはなかったはずだからです。CMMが私のポケットに入っているものの価値に気付かせてくれたのです。

20年前、コードを書く仕事からシステム・コンサルティングの仕事に転向すると決めたとき、「日本のソフト業界をなんとかしなくては」と自分に言ったときは、私は単なる「1人の外注SE」に過ぎませんでした。私には何の手段も持っていませんです。でも、それから20年経って、それが実現しているのです。37年前、論語を読まなかったら、そしてこの世界に戻ってこなければ「今の私」はないのです。

この世界に入って40年、これまで歩いてきた道を振り返り、そこで何を考えたのか、何をやって来たのか、それらが今日の私にどのように繋がっているのか、それを振り返ってまとめたのがこの本です。今、現場で悩んでいる若いSEの皆さんにとって何らかの参考になればと思っています。

 (2008年10月4日)